SS練習で書きました 人生で初めて書いたSSなので色々荒削りです
世界に、空に煌めく星が落ちた。
隕石ってやつだ。僕のいた世界というのはとても小さくて酷く脆かったらしい。一瞬にして、大切な楽園が崩れていく。地面が割れて川の水が溢れ押し寄せてきても、僕は動けなかった。飲み込まれて息ができなくなったところで、身体を起こす。
こんな子供じみた夢を見たのはいつぶりだろう。まだぺたんこな布団に二人並んで眠っていた頃だ。おひさまみたいにあたたかい、君の特等席である右方へ腕を伸ばしても、今はひんやりとしたシーツに掠るだけだった。鼓動がばくばくと嫌に耳に響いている。
温度を求めて、縋るようにサイドテーブルの上にある携帯へ手を伸ばし、君の名前を探す。寒いから、手が悴んで思うように操作ができずに何度か後輩達とのやりとりの画面を開いてしまった。
やっとの思いで辿り着いた場所には、寝る前に弾んだ会話が転がっている。
『明日の夜はユキん家で飲もうね! 』
『お休みだからって、いつまでも寝てちゃダメだよ!』
通話ボタンに指を伸ばす。
少しだけでいい。ただおやすみって一言、それだけでいいから。そうすれば、いつもみたいに君がゆさぶって布団を剥がすまで眠っていられるから。こっそりキスしてくれたって、いいのだから。
端末の明かりを消し投げ捨てる。床に落ちて嫌な音がした。画面が割れたかもしれない。でもどうだってよかった。
モモは朝から仕事だ。時刻は確認していなかったが、今起こしてしまうのは望ましくないだろう。片や僕は一日オフなのだから、別に眠れなくたって問題ないだろう。夜には会えるのだから。声を聞いて、食卓を囲んで、その肌に触れられるのだから。ほんの少しの間だけ、寂しい時間を過ごすだけだ。
カーテンの隙間からこぼれる光の眩しさにつられて、瞼を開く。隈の浮いた顔を晒す覚悟をしていたが、どうやらすぐに眠れたらしい。
特注品の枕に顔を埋める。
映画でしか見たことのない大きさのベッド。適度な硬さのマットレス。掛け布団はふかふかで分厚いのに重苦しくない。心地がいい重さだ。どこかの国の王様が使うものかと思うぐらい質の良い寝具達。ユキにとって睡眠は何よりも大事だからと、ここに越してきた時にモモが揃えてくれたものだ。
あの夢を見た後は、君を背後からぎゅっとして、君の心音を、君の温度を感じて。それでも震えの止まらない日には、優しく抱いてもらって。そうしなければ眠れなかったのに。
一人なのに、君がいないのに。僕を包み込む布団は、残酷なまでに心地よくて、温かかった。